この30分ほどの待ち時間で、改札を出て駅前を散策することに。
駅前通を少し行き、国道40号沿いに出てみる。この画像には写っていないが、画像外の左手にある商店にて食料調達。
画像右手の緑屋根の建物は
道の駅おといねっぷ(外部リンク・別ウィンドウ)のレストハウス。
中に入ってみようと近づいたものの、開館時間10時からとのことで入口は閉まっていた。
この道路が国道40号、画像中の信号交差点を左折し150mほどで音威子府駅。
音威子府駅に戻る。「森と匠の村」の名に相応しく、木をふんだんに使った駅舎だ。
行き先・乗り場案内も木工芸品と洒落ている。
音威子府駅ではD型硬券入場券を発売していたので購入。
表面は「森と匠の村・音威子府駅」の駅舎写真。
裏面。説明文によると、
音威子府とは、アイヌ語の「オ・トイネープ」(川口の濁っている川)という意味であり、駅舎は森と匠の村にちなんで木造で、平成2年12月に新築されました。
とのことで、駅舎は平成2年(1990年)の新築らしい。入場券の写真と前記の画像を比較すると、20年経って多少木の風味が出ているような気もするが、いかがだろうか?
この音威子府駅からは1989年に廃線になったJR
天北線が分岐しており、その関連資料を収集・展示している「天北線資料館」(入場無料)が駅舎内に存在する。到着時点では閉まっていたが、9時になりちょうど開館したようなので、ぜひとも見学させていただく。
稚内方面から見た昭和30年代の音威子府駅構内の再現模型。手前左が天北線、右が宗谷本線である。
ちなみに旭川~稚内の鉄道は当初は「宗谷線」として、浜頓別経由の天北線のルートが先に開通し、その後幌延経由の「天塩線」が開通、現ルートが宗谷本線、浜頓別経由が北見線→天北線と改名されたという経緯がある。沿線人口も幌延経由より浜頓別経由の方が多かったのだが、幌延経由と比べて大きく迂回することもあり、特定地方交通線への指定を経て廃線になってしまった。
駅構内模型を駅前方向から見る。旧駅舎は側面が牧舎のような造りの、よくある国鉄駅といった趣き。
かつて木材輸送はじめ貨物・荷物列車を取り扱っていた時代は、駅舎横の貨物ホームや駅裏の貨物退避線をフル活用していたのだろうか。
2番ホームに止まっている列車がキハ47牽引の旧客なのはご愛嬌ということで。
旧・上音威子府駅の縦型駅名票や、駅に掲示されていたであろう時刻表、通票閉塞器にタブレットと、当時の資料が並ぶ。
廃線記念とみられる入場券セット。
民営化後の廃線であるため、駅名左に四角囲みの「北」の字がある。
天北線営業最終日の日付の入った、音威子府から上音威子府ゆきの硬券乗車券。
裏面に村章と「森と匠の村」のスローガンがあるということは記念券であろう。
音威子府といえば「音威子府そば」で知られ、駅舎内にも「常盤軒」の立ち食いそば屋が存在する。
ここのそばは、蕎麦の実を皮まで挽いた黒い麺と、その麺に負けぬ濃いつゆを使っており、独特の風味がある。古くから旅行者の間で知られ、駅そば・駅うどん好きの間では特によく知られている。国道40号の至近ともあって、鉄道旅行だけでなくドライブの折に立ち寄ることもできそうだ。
麺類好きの自分としては是非とも賞味したいところではあったが、生憎9:30~16:00の営業となっており、悲しいかな9時半前に音威子府駅を発つ我々が口にすることはできない格好であった。またいつか再訪したいものである。さらば常盤軒。
そろそろ改札内に入る。
プラットホームには、丸太で出来た蒸気機関車が。どこまでも「森と匠の村」推しである。
余談だが、音威子府には「おといねっぷ美術工芸高等学校」という、木工を学べる高校まである。その殆どが村外出身者を占めるとのことで、「森と匠の村」としての宣伝はそれなりの効果をもたらしているように思える。
駅ホームの名所案内看板には、
その3で触れた天塩川温泉についての案内もある。
JR、特に特急列車で天塩川温泉に行きたい場合、特急から普通列車に乗り継いで天塩川温泉駅で降り、温泉まで徒歩等で行くことを考えると、ここからハイヤー(「タクシー」と言わない辺りが北海道らしい表現だ)で行くのが便利だろう。
音威富士スキー場は、村の南東にある村営のスキー場(参照:
音威富士スキー場|各課|音威子府村(外部リンク))。初級・中級者向けのこじんまりとしたゲレンデのようだ。
車内の運賃表。貧乏臭い話ではあるが、旭川から2730円ということは、既に18きっぷや北東パスの1日分の元は取れていることになる。
なおこの普通列車、列車番号が名寄と音威子府で2回変わるが、行き先などの案内は全て稚内行の通しの列車として案内される。
こちらは1番ホームに停車していたキハ54 508。
ちなみにここ音威子府駅はキハ40系気動車の運用北限であり、ここから先、稚内方面の普通列車は全てキハ54形での運行である。
乗車列車のキハ54 513と音威子府駅舎。駅舎の影に尻を突き出しているのは宗谷バスの路線バス。
宗谷バスといえば、天北線廃止後、元のルートを概ね辿る形で宗谷バスによる代替バスの運行が開始されたが、旅客流動や沿線人口と旧天北線沿いのバス経路が合致していない状態であった。そのため2011年10月1日から、一部区間で内陸部を経由していた旧天北線沿いの経路を、海岸沿いの国道238号を通り宗谷岬を経由する経路に変更された(参照:
天北線代替バス経路変更 | 道道つれづれ線 - 道道資料北海道(外部リンク・おくとんさん(大島仁さん)のサイト))。
鉄道からの転換交付金をもとに積んだ基金を取り崩し、赤字を補填してきた代替バスであったが、基金に余裕があるうちに抜本的な見直しをする必要性に迫られた。住民の移動ニーズに合わせた路線形態への再編を行うことを目的として調査を行った
天北線生活交通ネットワーク計画策定調査業務 概要版 報告書 - 浜頓別町(※PDF・外部リンク)によると、音威子府~中頓別間の旅客流動が特に少ないという調査結果(上記リンク先PDFの4ページ目の「図3 アンケートに基づく市町村間移動量(人/日)」)が出たことを踏まえ、音威子府~中頓別間の代替バス運行を取りやめ、音威子府~中頓別~浜頓別間を乗合タクシーに転換する方針が示された(参照:
天北線代替バスの一部区間で廃止提案。乗合タクシー転換へ。特定地方交通線の転換バスは生き残れるか - タビリス(外部リンク))。この駅で宗谷バスのローカル路線バスが見られなくなる日も近いのかもしれない。
さてそんな長話もほどほどにして、音威子府駅を出発。
ここからは宗谷本線・天塩川・国道40号がほぼ寄り添いながら行く。
筬島駅。国道40号から天塩川を橋で渡った反対側の集落にある。
背後にいくつかプレハブ小屋が見える。これは高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路として建設中である、国道40号音威子府バイパスの工事関係者用の設備と思われる。
筬島駅の車掌車駅舎。
ちなみにここ筬島には「
エコミュージアムおさしまセンター(外部リンク・音威子府村サイト)」という施設があり、夏季限定の開館ではあるが、木彫専門の彫刻家・故・砂澤ビッキ氏の作品や資料を展示している。
天塩川ギリギリを走る宗谷本線、そして川を挟んだところに国道40号(見難いが電柱が1本写っている)がある。
現道の国道40号が天塩川と崖に挟まれた狭隘な地帯を通っているため、特殊通行規制区間となっており通行止めが発生しやすい。この区間が通行止めになると、中川町から音威子府へは道道を経由し中頓別を迂回する必要がある。また道路幅が狭いうえ急カーブも点在するため事故の危険性も高く、国道40号の中でも円滑な交通の妨げになる区間である。そのために前述の音威子府バイパスの開通が望まれており、2018年度の開通を目指して建設が続けられている。
そんな狭隘な谷間を往く筬島駅~佐久駅の間に、かつて
神路駅という駅が存在した(参照:
神路信号場 - Wikipedia(外部リンク))。
この駅が設けられた神路という集落には、天塩川対岸の国道40号まで繋がる神路大橋という吊り橋が1963年に架橋されたものの、僅か9ヶ月後に落橋するという憂き目に遭っている。それが直接的な原因なのかは不明だが、1965年に集落は全戸撤退してしまった。この神路駅は鉄道或いは線路沿いを歩く以外の到達方法の無い秘境駅と化し、集落そのものも周辺へのアクセスルートも存在しないこの駅を一般客が訪問する理由も無くなってしまった。交換設備は存置されていたため、乗降するのは運転・保線業務に関わる国鉄職員だけという状況になり、1977年には信号場(仮乗降場)に降格し、民営化前の1985年には合理化で交換設備も不要になり、信号場としても廃止となった。
佐久駅。ふるさと伝承館の建物と一体になっている。
佐久駅まで来ると天塩川沿いの狭隘地帯を抜け、平地に出る。
駅名票の「天塩中川」の下に何か隠れているが、これは1990年9月1日まで天塩中川駅との間に存在した琴平駅の表記を上書きしたものと思われる。
今しがた「平地に出た」とは言ったものの、道道541号問寒別佐久停車場線の橋を挟んですぐそこには、相変わらず天塩川が流れている。
天塩中川駅に到着。特急停車駅だが簡易委託駅の無人駅。
不確かな情報ではあるが、乗車券は他の駅で印刷した切符(総販券)を、駅前の
AコープJAにて日付印を押す形で販売している。指定券については、駅手前の保線基地2Fにある駅事務所で2~3日前までに予約することで購入できるとのことらしい。
なおこの駅舎は2011年の訪問の数年後に改装されたらしく、画像のものとは違った外装になっている様子。(
2015年訪問時の様子はこちら)
その5へ続く。
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宗谷本線往復旅2011 記事一覧はこちら]